エガリア共和国政府は、従来「不法移民」と呼ばれていた人々に対する呼称を正式に廃止し、新たに「緊急避難移民」とすることを発表した。法的に不正な入国であっても、自国での生命の危機から逃れるためにやむを得ず入国した人々を難民とみなし、人道的見地から保護する姿勢を強調。しかし、その裏では「難民ビジネス」と呼ばれる経済的利活用が進行しており、賛否が分かれている。

政府によると、呼称変更の目的は「人権尊重と国際的責任の履行」にある。自国で戦争や迫害、災害などにより生命の危機に瀕した人々が、国境を越えてエガリアに流入するケースが増加。法的に不正な入国であっても、そうした人々を「不法移民」と呼ぶことは差別的であり、保護すべき難民であるとの認識から、「緊急避難移民」という呼称を採用した。

内務大臣のサミラ・ハリド氏は記者会見で、「我々は人命を最優先する。命の危険から逃れてきた人々を犯罪者扱いするのは時代錯誤だ」と強調。緊急避難移民として認定された人々には、居住権や就労許可を与え、国費で生活支援を行う方針を示した。

しかし、この政策には複雑な背景がある。緊急避難移民として認定された人々の中には、確かに生命の危機から逃れてきた難民がいる一方で、自国の農繁期が終わり仕事がなくなった出稼ぎ労働者や、テロ行為などの犯罪で自国にいられなくなった者も含まれていることが判明。政府の審査が甘いとの批判が上がり、「難民」を名目にした不正流入が増加している。

さらに、こうした流入者を「人命保護」の名目で受け入れつつ、国費を投入して支援する裏で、政府と結びついた企業が「難民ビジネス」を展開している。政府が所有するホテルや民間業者が運営する宿泊施設に緊急避難移民を収容し、高額な宿泊費やサービス料を国費から徴収。建設業界や労働仲介業者も、移民を低賃金労働力として活用し、利益を上げている。

「これは人道支援ではなく、ビジネスだ」と非難するのは、市民団体のリーダー、ユナ・カーン氏。「政府は難民を装った労働者や犯罪者まで受け入れ、国費を使って一部の企業を潤わせている。真の難民支援とは程遠い」と訴える。

緊急避難移民の受け入れ拡大に伴い、エガリア国内では労働市場の混乱が顕著だ。低賃金で働く移民が増えたことで、地元労働者の雇用が圧迫され、失業率が上昇。一部地域では、犯罪率の増加も報告されており、「犯罪者を難民として受け入れるのは危険」との声も根強い。

政府は「審査の厳格化と透明性向上」を約束しているが、難民ビジネスの利権構造が根深いだけに、改革が進むかは不透明だ。国際社会からも、「人道支援を装った経済的搾取」との批判が強まっており、エガリアの政策は今後さらなる議論を呼びそうだ。

「命を守るための政策が、一部の人々の金儲けに利用されている」と語るのは、難民支援NGOのメンバー、アミン・ザヒド氏。「呼称を変えるだけでは何も変わらない。真に人命を尊重する仕組みが必要だ」と訴えている。

この記事はフィクションであり、実際の国や出来事とは無関係です。