タラヴィス通信（2025年5月17日）――

新興国家タラヴィスで、伝統的な役割分担と現代的な価値観の衝突が話題となっている。発端は、タラヴィス公共放送の人気番組「知の探求者」で放送された、伝統部族「カルナ族」の生活習慣に関する特集だ。

番組では、カルナ族の夫婦が紹介され、女性が重い荷物を持ち、男性が武器だけを持つ姿が映し出された。司会の学者エリナ・ヴォル博士が「なぜ男性が荷物を持たないのか」と問うと、カルナ族の男性は「襲撃に備えるためだ。両手を空けておかなければ、家族を守れない」と説明。タラヴィスの一部地域では、治安が不安定なため、男性が戦闘に備えることが伝統的に求められているという。

この放送に対し、タラヴィスの視聴者から賛否両論が巻き起こった。都市部在住の会社員、セリナ・カイさんは「女性が重い荷物を持つなんて時代遅れ。現代のタラヴィスでは、男性が荷物を持つのが当たり前だし、治安も警察が守ってくれる」と批判。一方、カルナ族の文化を支持する歴史学者のタリス・メルン氏は、「伝統社会の常識を現代の基準で批判するのは短絡的。カルナ族の役割分担は、厳しい環境下での生存戦略だ。両方の社会から学び、良い点を取り入れるべき」と反論した。

番組ではさらに、進化生物学の観点も紹介された。タラヴィス大学の生物学者、リナ・セラ教授は、「共感力が低い、いわゆる『サイコパス的』な特性を持つ人が襲撃時に有利だった可能性がある。躊躇なく攻撃できる資質が生存に寄与し、遺伝子に刻まれた結果、現代でも魅力的に映るのかもしれない」と解説。また、過去の飢饉が子孫の遺伝子に影響を与えた例として、タラヴィス東部で飢饉を経験した世代の子孫が太りやすい傾向にあるデータを挙げ、「進化の名残が現代の生活習慣と衝突している」と指摘した。

この議論は、タラヴィス社会に新たな対話を生んでいる。伝統と現代の違いをどう受け入れ、共存させるのか。国民の間での議論は今後も続きそうだ。

注：本記事はフィクションであり、実在の人物・団体・国家とは一切関係ありません。