ニュース視聴は「ダメ人間」を作る?情報社会の落とし穴
ニュースがもたらす「嫌な気分」
「誰かが犯罪を犯した」「芸能人のスキャンダル」「社会問題の指摘」――日々のニュースに接することで、私たちは何を得ているのか。社会学者の佐藤健氏(桜井大学)は、「多くのニュースは嫌な気分を誘うだけで、具体的な行動やメリットにつながらない」と指摘。時間を費やしてニュースを見る価値があるのか、現代社会の情報消費に疑問を投げかける。
誤解を招く情報のリスク
ニュースの中には、背景知識がないと誤解を招く情報も多い。例えば、「包丁を使った殺人事件」が報じられると、包丁の有用性を知る人は「問題は道具ではなく使用者」と判断するが、SNS絡みの事件の見出しに慣れていない高齢者などは「SNSは危険」と誤認する可能性がある。佐藤氏は「ネット未経験の世代がネット関連のニュースを理解するのは難しく、誤った認識が広まりやすい」と警鐘を鳴らす。解説番組が人気だった背景には、ニュースを「わかった気」になる視聴者の存在があったと分析する。
メディアへの盲信とバイアスの問題
米国の神経科学者グレゴリー・バーンズ博士の2009年の研究によれば、人は信頼する専門家やメディアの意見を鵜呑みにし、自身で考えることをやめる傾向がある。テレビや新聞を「事実の源」と無条件に信じる視聴者は、バイアスのかかった情報にも影響されやすい。佐藤氏は「スポンサー企業は好意的に扱われ、訂正記事は目立たない。スキャンダルが優先され、記者の思想や制作背景は無視される」と問題を指摘。メディアが大衆扇動のツールとなり、視聴者が意図的な情報操作に気づかない危険性を訴える。
ニュース視聴が「洗脳」に?
佐藤氏は、ニュース視聴が「洗脳」に似た状態を引き起こす可能性を指摘。「問題を知るのは大事」と叫ぶメディアに影響され、視聴者は自分で調べず垂れ流しの情報を受け入れる。結果、「ドラッグのように情報を求める状態になり、考える力を失う」と警告する。ニュースを見るほど「ダメ人間」になるという過激な見方は、情報過多の現代社会への警鐘だ。
個人の発信が変えるメディアの役割
インターネットの普及で、個人が情報発信者になれる時代が到来した。専門家や当事者がSNSで報道に反論したり、個人が「紛争地帯ルポ」動画を公開したりする例も増えている。佐藤氏は「記者が専門外の分野でバイアスのかかった情報を流すより、当事者や専門家の発信の方が信頼性が高い場合がある」と強調。ベルギーのゲント大学の研究では、フェイクニュースによる誤認を正すのは認知能力が高い人に限られるため、誤った情報の初期接触が特に危険だとされる。
情報リテラシーの重要性
「知らないより知っている方がいい」という意見もあるが、誤った情報を信じ込むと、後にそれを否定するのは心理的に難しい。佐藤氏は「ニュースを鵜呑みにせず、信頼できる一次情報を自分で調べる習慣が不可欠」と訴える。メディアの役割は依然として重要だが、視聴者自身が情報リテラシーを高め、バイアスや意図を見抜く力が求められる。
ニュース視聴がもたらす影響は、単なる時間の浪費を超え、思考や判断力にまで及ぶ。情報社会を生き抜くためには、自分で考える力を失わない姿勢が、今、必要とされている。
注:本記事はフィクションであり、実在の人物・団体・国家とは一切関係ありません。