都市部では、飲食店が入っていたビルに空きテナントが目立つ。コロナ禍による閉店ラッシュは予想されていたが、状況は依然として厳しい。以前から、飲食業の継続が難しい場合、事業継続のための資金支援よりも転職支援が必要との声があった。業種転換への補助金制度も注目されたが、根本的な解決には至っていない。「いつか元に戻る」と信じる人々や、慣れた仕事を続けることを優先する傾向が、変化を阻んでいる可能性がある。

人は合理的に「稼げる仕事」に流れるはずだが、実際には慣れた環境や安心感を優先しがちだ。例えば、従来の仕事で月16万円の収入に対し、新しい仕事で50万円が得られる可能性があっても、未知の環境への不安から踏み出せない人が多い。慣れた世界で小さなシェアを奪い合う方が、精神的な負担が少ないと感じるのかもしれない。この感情的な選択が、空きテナント問題や雇用の停滞を助長している。

コロナ禍では、狭い自宅で孤立感を覚える人々が、閉店した飲食店に代わって路上飲みに繰り出す光景が見られた。緊急事態宣言による店舗の早期閉店が続く中、その理由を理解しない人も多い。感染防止のための措置が「自由時間が増えた」と誤解され、濃厚接触を招くケースが問題に。背景には、施策の説明不足や批判一辺倒の議論があり、正確な情報が伝わっていない現実がある。

こうした状況を踏まえ、空きテナントを活用した「会員制会話クラブ」のアイデアが浮上している。駅近くの空きテナントを利用し、換気十分な空間で飲食なしの会話の場を提供する。月額制で運営し、気軽に立ち寄れる場所として、話し相手を求める人々のニーズに応える。サークル内で友人関係が築ければ、継続的な会員確保も見込める。設備投資は最小限で済み、ビルのオーナーにとっても次の入居者までのつなぎとして活用できるメリットがある。

会話クラブは、失業者やビルオーナーの収入確保の一助となる可能性がある。空きテナント問題の解決策として、雇用創出や地域活性化につながるかもしれない。ただし、問題行動を起こす会員への対応や、空腹・飲酒状態での参加を防ぐルール作りが必要だ。また、オンラインでの交流を推奨し、デジタルリテラシーの向上をサポートすることで、新たな知識やつながりが生まれる可能性もある。一方で、従来の非生産的な飲み会文化に比べ、こうした場が働き方改革や社会の変化を促す第一歩となるかもしれない。

注：本記事はフィクションであり、実在の人物・団体・国家とは一切関係ありません。