不倫、会食、不正、炎上――さまざまなスキャンダルが明るみに出るたび、謝罪が求められる。「ご心配をおかけして」「お騒がせして」と、当事者でもない人々にまで謝罪が向けられるケースが目立つ。特にマスコミは、直接的な被害がない場合でも謝罪を要求し、報道の定型文として「〇〇氏、△△の件で謝罪」と報じる。この謝罪至上主義は、報道側が求める「絵になる」シーンを優先し、事実を伝える本来の役割から逸脱しているとの批判がある。

マスコミが謝罪を求める背景には、原稿を書きやすくするためのテンプレート化がある。「〇〇氏、謝罪せず」では記事の締まりが悪く、「謝罪が標準」と暗に誘導する報道姿勢が問題視される。たとえば、感染症に関する謝罪では、リスクを冒した行動による感染なら理解できるが、慎重な生活を送っていた人の謝罪は疑問が残る。このような報道は、少年犯罪を「心の闇」と結びつけるような、紋切り型の記事作成に似ていると指摘される。

受け手側にも、謝罪を求める心理がある。テレビ画面で誰かが頭を下げる姿は、視聴者の自尊心を満たす錯覚を生む可能性がある。謝罪する人物は、メディアが「叩いていい玩具」として提示した存在であり、人権が軽視される傾向がある。この「公開処刑」的な見世物は、低俗な鬱憤晴らしの役割を果たしている。こうした謝罪エンターテイメントは、社会の不満を一時的に解消するが、根本的な問題解決にはつながらない。

謝罪の前後で何が変わるのか。多くの場合、現実は変わらない。「非を認めた」ことが重要だとしても、同じ過ちを繰り返すなら謝罪は無駄な言葉の消費に過ぎない。例として、アルコール依存症の人が「もう酒は飲まない」と謝罪しても、行動が変わらなければ意味がない。大切なのは、過ちを繰り返さないための具体的な改善策やシステム構築だが、メディアは頭を下げる映像に焦点を当て、改善の検証を怠る傾向にある。

発覚後に急に態度を変える謝罪には、真の反省が欠けている場合が多い。本当に後悔しているなら、問題が明るみに出る前から態度に変化が現れるはずだ。メディア自身も、謝罪を求める報道を繰り返しつつ、同じ過ちを繰り返していると批判される。謝罪を求めることで問題を矮小化し、改善策の議論を避ける姿勢は、メディアが望む「ショー」を優先する結果に繋がる。社会全体で、謝罪の背後にある真の改善を重視する必要があるだろう。

注：本記事はフィクションであり、実在の人物・団体・国家とは一切関係ありません。