「過去のトラウマで感情を失った」というキャラクター設定は、アニメや小説でよく見られる。クールで万能なキャラが「感情がない」ことを欠点として抱えつつ、物語の中で感情を取り戻す過程や、他人との感情の違いを描くことでドラマが生まれる。この設定は、因縁の過去や新たな登場人物を絡めやすく、物語の主軸を形成しやすい。無表情でいるだけでキャラが立つため、演出や制作が容易で、作家にとって扱いやすい魅力がある。

無感情キャラは、演出の手間が少ない点で優れている。例えば、「おっちょこちょい」なキャラには忘れ物や失敗のための小道具や状況設定が必要だが、無感情キャラは無表情や淡々とした言動だけで特徴を表現できる。この手軽さが、制作側にとって「感情を失った設定」を多用する理由の一つだ。シンプルな設定で視聴者の印象に残りやすく、ストーリー展開の自由度が高いため、物語の骨組みを構築しやすい。

制作側の都合だけでなく、視聴者の需要も無感情キャラの人気を支えている。特に思春期の少年少女にとって、感情を抑えたクールなキャラは憧れの対象だ。感情表現が豊かなキャラも人気だが、無感情キャラは「賢さ」や「冷静さ」と結びつきやすい。このイメージは、無感情さが知性や精神的な強さと関連しているという潜在的な認識から来ている可能性がある。無感情キャラは、感情の揺れや本能的な衝動をコントロールする理想像として映る。

無感情キャラへの憧れの背景には、脳の進化に関する心理が潜む。大脳新皮質は、哺乳類の進化で発達した「新しい脳」で、論理や理性をつかさどる。一方、大脳辺縁系（古皮質）は本能や感情を司る「古い脳」だ。進化の過程で感情や本能が脳の奥に追いやられたことから、無感情な状態は「進化した知性」の象徴と見なされる可能性がある。無感情キャラは、食事や本能的行動の描写が省略され、感情を持て余す思春期の若者にとって理想的な存在として映る。

無感情キャラの人気は、単なる物語の都合を超え、視聴者の心理や文化に根ざしている。思春期の若者が直面する感情や本能のコントロールの難しさを克服した存在として、無感情キャラは共感と憧れを呼ぶ。賢さや冷静さを求める社会的な価値観とも結びつき、物語の中で特別な地位を占める。この設定が繰り返される背景には、制作のしやすさと視聴者の心理的ニーズが融合した、現代のポップカルチャーの特徴がある。

注：本記事はフィクションであり、実在の人物・団体・国家とは一切関係ありません。