プロスポーツ選手やアイドルなど、若さがピークとなる職業では、セカンドキャリアの課題が深刻だ。プロサッカー選手の平均引退年齢は約26歳、プロ野球選手は約29歳と、ほかの競技に比べ早く、準備期間が短い（上代ら, 2013）。引退後、20代で新たなキャリアを模索する必要に迫られるが、経済的・社会的な不安定さが伴う。

引退後の選択肢は限られている。コーチや解説者といった役割は枠が少なく、飲食業やタレント活動も競争が厳しい。成功を収める者はごくわずかで、多くは安定した収入を得る道を見つけられない。少子化による若年層の減少で、指導者需要も縮小傾向にあり、海外での活躍を視野に入れても言語や文化の壁が立ちはだかる。

スポーツやアイドル業界は、若年層の「輝き」をビジネスとして活用するが、これが社会全体に弊害をもたらす。ケガや早期引退でキャリアが終わるリスクを抱えながら、多くの若者がこの不安定な業界に引き寄せられる。企業やメディアは集客力を利用し、サイクルを維持するが、若者の時間とエネルギーを消耗させ、社会インフラを支える人材育成が後回しになる懸念がある。

この問題は、古典や音楽教育の「必要性」論争とも通じる。福沢諭吉がかつて古典教育の無意味さを説いたように、現代でも「実用性」が疑問視される学びが続いている。音楽も同様で、個人の楽しみとして存在する一方、強制的な学習が求められる。こうした「不要論」があっても、関連業界の「困る人」がいるため、変化は進まない。

ペット飼育もまた、セカンドキャリア問題と似た構造を持つ。高齢化する飼い主がペットの世話をできなくなると、家族に負担がかかる。動物愛護の観点から「ペットを飼うな」とは言い難いが、肉食とペット愛護の矛盾など、感覚的な価値観の違いが議論を複雑にする。

アスリートやアイドルといった「青春ビジネス」は、若者の夢を支える一方で、セカンドキャリアの不安定さを放置している。計画的なキャリア形成や運用の知識が求められるが、業界に飛び込む若者の多くは短期的な成功を優先しがちだ。このままでは、ライフラインを支える人材不足や社会保障への負担が増す恐れがある。業界関係者や社会全体で、若者の未来を見据えた対策が急務だ。

注：本記事はフィクションであり、実在の人物・団体・国家とは一切関係ありません。