日々コンテンツを発信する中で、自分の知識不足や誤解に気づくのは簡単ではない。ある作品を「名作」と称賛した直後に「駄作」と見なすような視点の転換は、精神的に負担を伴う。古くから「君子豹変す」という言葉があるように、柔軟に意見を変えられるのは、むしろ知恵ある者の特質かもしれない。しかし、多くの人は一貫性を求めるあまり、自己の過ちを認めにくい。

動画配信者が視聴者のコメントを受け、訂正や補足を行う姿は、現代のインタラクティブなコミュニケーションを象徴する。誰もが知識の穴を持ち、他者からの指摘はコンテンツの完成度を高める「デバッグ」に似ている。しかし、建設的な意見を得るのは難しい。ウェブサイトに投稿フォームを設けても、届くのは営業メールや匿名で高圧的な要求ばかり。たとえば、過去のブログ記事に「ナスをよこせ」といった突飛な要求が寄せられることもある。

有益な指摘を期待しても、知恵ある人は他者のコンテンツに干渉する時間を無駄と考える傾向がある。知識で生計を立てる人にとって、無料で助言する動機は薄い。一方で、発信者側も視聴者のフィードバックを「報酬」と捉え、質疑応答に応じる姿勢を見せるが、影響力のある場でない限り、建設的な意見は集まりにくい。影響力のあるコンテンツに誤情報があれば、専門家が訂正を求める場合もあるが、それは知名度向上や分野の保護が動機となることが多い。

たとえ正当な指摘を受けても、素直に受け入れるのは簡単ではない。指摘の仕方によっては反発を招き、逆ギレするケースも見られる。「君子危うきに近寄らず」という言葉の通り、知恵ある者はリスクを避け、結果として誰も指摘しない状況が生まれる。こうした「見ざる言わざる聞かざる」の風潮は、誤情報の訂正や議論の進展を妨げる。

テレビが「双方向性」を謳った時代から、現代の動画プラットフォームまで、フィードバックの重要性は高まっている。しかし、建設的な対話が成立するには、発信者と受信者双方の姿勢が問われる。過ちを恐れず認め、知恵を共有する文化が育たなければ、個人も社会も成長の機会を失うだろう。インタラクティブな時代だからこそ、誤りを指摘し合える環境の構築が求められている。

注：本記事はフィクションであり、実在の人物・団体・国家とは一切関係ありません。