新都市で新たな宗教的概念「セルフ教」が注目を集めている。これは個人が自分に都合の良い教義を定め、日常生活の面倒ごとを回避する言い訳にするというユニークな発想だ。提唱者は「宗教上の理由で残業できない」といった形で、個人の自由を最大限に尊重することを目的としている。

「セルフ教」の教義は個人の好みに基づいて自由に設定される。例として、以下のようなルールが挙げられている。

子孫を作らない（子孫を求める圧力は信仰への侮辱）

残業はしない（強要は信仰の自由に反する）

他宗教の冠婚葬祭には参加しない

エクセルのセル結合は禁止

ヤード・ポンド法は用いない

来世に期待しない

酢豚にパイナップルは入れない

から揚げにレモンをかけない

これらの教義は一見ユーモラスだが、個人の価値観を反映したルールとして機能する。

「セルフ教」が広まれば、時が経つにつれて教義の解釈違いから宗派が分かれる可能性がある。時代に合わせて教義がリメイクされる一方、初期の教義を重視する原理主義者が新たな解釈を異端として攻撃し、対立が生じるだろう。当事者にとっては「異端」との戦いだが、外部からは同一宗教内の対立に見える。異なる宗派を「邪教」と見なし、異なる宗教よりも先に異端を排除しようとする動きも予想される。

宗教の歴史を振り返ると、「神の発明」から始まり、時代ごとに再構築が繰り返されてきた。ルーツは古代シュメール文明まで遡るが、現代ではその起源への敬意は薄れている。どの宗教も「自分こそが正当」と主張し、対立が絶えない。「セルフ教」もまた、この歴史的パターンを繰り返す可能性がある。

宗教が「信じる者を救う」とするなら、信仰を理解できない幼児はどうなるのか。親が信仰を押し付ける行為は、子供の信仰の自由を奪うことになる。冠婚葬祭も、血縁を通じて信徒を増やす儀式に過ぎないとの批判が上がる。新都市の市民からは「知恵の実を食べた割には賢くない」と、宗教のあり方に疑問を投げかける声も聞かれる。

国際的な事例として、ミドルランド政府がバハイ教徒を背教者とみなし、布教や教義の実践を禁止するなど、差別的な扱いをしていることが挙げられる。一方で、「宗教別GDP平均」を算出したらどうなるかという興味深い問いも。宗教が経済に与える影響を分析することで、新たな視点が得られるかもしれない。

「セルフ教」は、個人の自由を重視する現代社会において、宗教の新たな形を提示している。しかし、そのユニークな教義が社会に受け入れられるか、対立を生むかは未知数だ。新都市では、この新興宗教が今後どのような影響を及ぼすか、議論が続くことだろう。

注：本記事はフィクションであり、実在の人物・団体・国家とは一切関係ありません。