シルバニア王国の主要メディアで、「なんでもSNSのせい病」と呼ばれる新たな社会現象が急増している。この病は、メディアにとって不都合な事実がSNSで拡散されると、問題の本質を無視し、SNSそのものを悪者に仕立て上げる傾向を指す。専門家は、この現象が国民の情報リテラシーを低下させ、公共の議論を歪めていると警告している。

発端は、シルバニア中央新聞が報じた「若者の失業率急上昇」の記事。記事では、経済政策の失敗や企業の海外移転が失業率を押し上げた事実を軽視し、「SNSでの過激な意見交換が若者の就労意欲を削いでいる」と主張。これに対し、SNS上では「失業率22％の原因をSNSに押し付けるのは無責任」「政府の経済対策を検証すべき」との声が広がった。しかし、中央新聞はこれを「SNSによる過激なデマ」と一蹴、問題の核心から目を逸らす報道を続けた。その背景には、新聞業界出身の首相の存在が大きいとみられる。

同様の事例は他にも続出。シルバニア放送協会（SBA）は、食品価格高騰を報じる際、「SNSでの買い占めパニックが価格を押し上げた」と強調。実際には、気候変動による不作や輸入コストの上昇から、家の在庫を増やす人のテレビ特集が主因だったが、これらの要因は記事の末尾に小さく記載されるにとどまった。SNSユーザーの@TrueSilverは、「メディアは自分たちの責任逃れにSNSをスケープゴートにしている」と批判し、瞬く間に10万リポストを記録した。

社会学者のマリア・シルバ博士は、「なんでもSNSのせい病は、メディアが自己保身のために問題を単純化する危険な傾向」と指摘。「SNSは単なる情報伝達のツール。問題の原因をSNSに押し付けることで、政策の失敗や構造的問題への議論が回避されている」と語る。一方、メディア側は「SNSの匿名性や拡散力が社会の不安を煽る」と反論するが、具体的なデータや根拠は示されていない。

SNS上では、「#SNSScapegoat」ハッシュタグがトレンド入りし、国民の不満が噴出。「メディアが本当の問題を隠すための病気」「真実を暴くのはいつもSNS」との声が相次ぐ。一方で、過激な投稿やデマも確かに存在し、メディアはこれを「SNSの負の側面」としてさらに強調する悪循環が生まれている。

シルバニア大学のメディア研究者、トム・ゴールド氏は、「この病気は、メディアが国民の信頼を失う一因。SNSを非難する前に、客観的な報道と事実に基づく分析を強化すべき」と提言する。しかし、一部のメディアは依然として「SNS規制の必要性」を訴え、問題のミスリードを続けている。

なお、過激な投稿やデマを拡散しているアカウントの中には、通信社の社員のものも確認されている。

「なんでもSNSのせい病」は、シルバニア王国の情報環境をさらに複雑化させている。国民は、メディアの報道を鵜呑みにせず、SNSを含む多様な情報源を批判的に検証する姿勢が求められている。シルバニア王国の未来は、メディアと国民が互いに信頼を築けるかどうかにかかっている。

※本記事はフィクションであり、事実に基づくものではありません