明治天皇、あんパンを食す

記入日:2004/01/30

この間の水曜日に放送された「その時歴史が動いた」を今さらながら観た。この番組は、いわゆる天下分け目の大決戦のような歴史の転機ばかり追うものではない。この番組の本の方でも、そういった歴史的大事件以外にも目を向けることを書いている。その最初が夏目漱石の話だったと思う。

そして、今回はあんパンである。「あんパン誕生のその時は、歴史をどう動かしたか」などと言われると冗談のようにも聞こえる。実際、バックで流れていた音楽は少し気の抜けた感じがする音楽だった。演出陣もそれを狙っていると思う。

しかし、たかがあんパンといえど、時代の変化における役割が大きかったのだと、ほんの少しは思う展開だった。まぁ、途中までは緊迫感のないプロジェクトXのようなノリで、木村安兵衛が苦心してあんパンを誕生させる過程を描いている。

誕生秘話

当時のパンはビール酵母から発酵させる塩味のもので、なかなか人々に受け入れられなかった。商売がうまくいかない上に、安兵衛は火事で家を燃やしてしまうが、パンを焼くかまどだけは残る。一時は「パンは脚気に効く」と評判になって売れるが、脚気騒動が収まるとさっぱり売れなくなる。

そんな時、安兵衛は人気の牛鍋を見て思う。西洋から入ってきた牛肉が受け入れられたのは、味噌などで味を付けて日本人の舌に合わせているからだ。そこで安兵衛は饅頭(中国から入ってきたときは中に豚肉や野菜を入れていた)にあんこを入れたように、パンにもあんこを入れようと思い至るのである。

安兵衛は饅頭のように生地に砂糖を入れ、あんこを詰めてパンを焼いてみた。ところが、パンは膨らむことなく、割れてあんこが飛び出していた。砂糖を入れることでビール酵母が働かなくなっていたのだ。

安兵衛は考える。何故、同じ条件なのに饅頭は膨らむのか。それは饅頭がビール酵母ではなく、日本酒の酵母を使っているからだ。そこで安兵衛は日本酒の酵母を使ってあんパンを焼いてみるのである。こうして誕生したのがあんパンである。

食べ方の正式な作法

「何だ、饅頭の皮をパンに変えただけじゃないのか」そう言われると元も子もない話だが、何事も最初の一歩は大変である。その辺を踏まえて、今度あんパンを食べるときは、「和魂洋才(番組内で和魂洋才の象徴として取り扱われているが、ものがあんパンだけにマヌケさのようなものが漂っていた)」「文明開化の味」と心で唱えながら食べてみよう。

それはそうと、パンと言うとパンには食べ方の正式な作法があることを思い出す。昔、パンが高級品だったときに決められた作法で、まずパンを両手で持ったら左右半分にちぎり、左手に持っている方を皿の上に置く。次に右手に持っているパンを左手に持ち替え、右手でつまんで取って食べる。左手に持ったパンがなくなったら、さっき皿に置いたパンを左手にとって同じように食べるのである。

確か、マンガはじめて物語とかいう番組だったような気がするが、何分十数年以上も前のことなので作法も番組名もうろ覚えだ。ただ、これは中に何かが入っているパンを対象としたものではなかったような気がする。

 

ランダム・ピックアップ