二度目の訪朝

記入日:2004/05/23

小泉総理の二度目の訪朝が昨日行われた。今日はその訪朝の検証があちこちで見られた。蓮池さん、地村さんの家族が日本に来る一方で、アメリカ軍の拘束を懸念するジェンキンス氏は日本行きを拒んだ。最終的には第三国、たとえば北京で家族との再会を果たすという方向で、帰国した拉致被害者の家族問題は決着をみた。行方不明の10人に関しては日本側も加わって再調査ということだった。

そして、日本は北側に対して食料25万トン、医薬品1000万ドル相当の人道支援、おまけに経済制裁を発動しないという確約をしてしまった。軍事的な問題は現状の維持というか、成果というほどのものではなかった。拉致被害者家族側からは「予想していた範囲での最悪の結果」という評価が突きつけられた。

しかし、この事件に関する街の声は、「帰ってきてよかったです」「帰ってこられなかった人がいて残念です」といったようなものだった。思わず、「それだけ?」と思ってしまった。個人的には多くの物資を供給することもだが、何より経済制裁の発動をしないと確約してしまったことに少しは触れて欲しかった。

人道支援と言えば聞こえはいいが、拉致被害者の問題と同時にこういうことが決定されると、いやがうえにも犯罪者に貢ぎ物をして人質を返してもらったという見方になる。おまけに、経済制裁の発動はしないとしたのだから、北に対する最強カードを失った日本の発言力は大きく低下したと言っていい。今後のことを考えると、代償の大きな訪朝だったと言えなくもない。

選挙に向けてポイントアップ

「家族が帰ってきたらいいじゃないの」と家族帰国のニュースだけ見て思う人がいるかも知れない。実際、街の声は帰国を喜ぶものばかりだった。ワイドショーや女性週刊誌が盛り上げた「かわいそうな拉致被害者」という視点しかないせいか、外交問題としての拉致事件という認識が薄いのかもしれない。

果たして本来の目的(自民にとって)である「選挙に向けてポイントアップ」に繋がるだろうか。逆に、苦しい状態にある民主党には格好の攻撃素材ができたと言えのるだろうか。さて、結果は如何にであるが、投票率が低くていつものような展開になる気がしないでもない。

それにしても、損失が目立つ会談だった。その弱腰さに思わず、報道陣がシャットアウトされた後、銃でも突きつけられたのではないかと勘ぐってしまう。そもそも、あの国に出向いている時点で身の危険を感じずにはいられないだろう。かといってこちらのホームでの会談を飲むような男ではないだろうが(飛行機は怖いそうだし<暗殺を恐れて>)。

ただ、最終的な評価というものを今下すわけにはいかない。今後の動向を見てこそ、今回の訪朝における成果というものを論じられるだろう。もともと、外交問題というのは機密が多いので、水面下で進む部分を加味した評価を私たちはできない。そういった難しさが、こういった問題にはある。

観光資源としての拉致被害者

某街の役所に吊された拉致被害者家族出迎えの垂れ幕の写真を見て、何となく「観光資源としての拉致被害者」というものを感じてしまった。そりゃ、まぁ、事情はどうあれ取材陣やら何やらが街に来て泊まったりするんだもの、少なからず街には収益があるでしょうよ……。

 

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