幻に怯える

記入日:2005/06/01

たまには自分を切ってみる。今日、大学の食堂で例の騒音野郎を見かけた。いや、奴だと思わしき人物を見つけた。正直言って奴の顔をまじまじと見たことがないので、どんな顔をしていたのかいまいち思い出せない。思い出そうとすると、去年同じ授業を取っていたK-1の武蔵似の奴の顔とだぶってくる。

そんなあやふやな状態だというのに、私という人間は奴だと思って妙に警戒してしまった。奴は男の友人と井上和香似の女と同じテーブルに着いていた。こっちの方は気にかけてはいないような感じだった。それでも、私は奴が何か言ってきたらとか、今後も奴に会うかもしれないという嫌な気持ちを抱えたまま、大学に来るのは嫌だといったマイナスイメージが次々に頭に浮かんで思考を占拠した。

そして、明日もとある作業のためにここに来ることへの恐れと不安が湧き起こってきた。同じ時刻、同じ場所で、奴が仲間を引き連れて待ちかまえ、何かをしてきたら……そんな根拠のない不安に襲われた。勝手に不安を押し広げて、私は自分で自分に恐怖心を抱かせているのだ。まったくもって根拠のない不安を。

極めつけは授業後である。再び食堂に行ってとある作業をしようとしたとき、さっきとはちょっと容姿の違う男を見て、奴ではないかと思ったことだ。やっぱり奴はこんな感じではなかったか、妙にナルシストくさいキモさがあってそう思ったのだが、何にでも恐怖を覚えるのような自分に嫌気が差した。

そもそも、奴は引きこもり音楽野郎である。こんな時間に大学に来ているとは思えない。次に、引っ越しの際には私の顔をじっと見ていたキモい野郎である。私に気付いたらずっと見ているに違いない。たとえ、友人がそこにいてもそういった話をし、気になって仕方ない状態になるのが今までの流れからいって自然である。

そう、総合して考えれば別人であったと思えてくる。仮に奴だったとして、向こうだって私が私だという確証はもてないだろう。そもそも、非は向こうにあるのだから私は堂々としていればいいのだ。もし、奴が実力行使に打って出たとしても、引きこもり野郎なんざ迎え撃ってやればいいだけのことだ。何も難しいことはない。

そんなクソみたいな野郎のことでうだうだ考えるのは馬鹿らしい。私はどうかしていると言っても過言ではない。つまらぬことを考える頭の余裕があるのなら、レポートを終わらせろ、朝っての授業の予習をしろ、やれそうな女でも口説けと言いたい。というか、自分に対してなので既に伝わっているのだが。

子どもへの思い

子どもを生みたいが、妊娠しない主婦の知り合いがいる。いつも一緒に授業を受けている人なのだが、その人に対して私は子どもに関する話題を何度かした。今日は発達心理学の赤ちゃんと母親の実験の話をしてしまった。そのことで、彼女からそういうことを言われるのは辛いからやめてくれというメールが来た。

私の配慮が足りなかったと平謝りしたし、このことではまったくもって私に非があると思っている。ただ、謝ったとはいえ、男である私には生みたいのに生めないで苦しむ女心は到底わかり得ない。その点に関しては、彼女も若い男の人にはわからない女心かもしれませんが、と断りを入れている。

この件は大いに反省すべきところがあり、私も結構落ち込んだのだが、その落ち込みは彼女を傷つけたこと以上に、気付いてしまった自分の意外な気持ちに寄るところがあるのかも大きい。それは「(私とは)これからもよい友達でいたいので、今後のためにもはっきり伝えておきます」という彼女の文に、パッと見て仮に友人でなくなっても困らないなという感情が咄嗟に出たことだ。

そう、私は今「友人」として付き合っている人がいなくなったところで何にも思わない。日記を見ればわかる通り、そうそう簡単に「友人」と書きはしない。あくまでも「知人」と書いている。所詮、知っている人に過ぎないのだ。仲良く飲みに行こうと、楽しく遊ぼうと、悩みを打ち明けたとしても、そこに友情を感じることはないのだ。ただ、友人ぶった付き合いをしているに過ぎない。

何故そうなのか? 明確な答えは私自身出せない。そういう生き方は寂しいとか、かわいそうな人ね的な見方をされれば、そうかもしれないねとしか言いようがない。どうしたら友人だと思うのかと聞かれても困る。ひとつ言えるとしたら、私の中でその人を失うことの大きさが自覚できたとき、もしくは一目置く何かをその人に見いだせたとき、いや 根本的な物の考え方で共通点を見つけたときに思えるのかも知れない。

逆にこれは恋愛に関しても言えるのかもしれない。物事の本質を捉える目を持つ人を求めるからこそ、なかなか好きになれそうな女性が見つからない。「自分を好きになれない人は他人も好きになれない」とも言うが……。ともかく、私が人以上の他人への興味が薄いのは事実だろう。他人どころか、物事に対して執着心というものがまるでない。なくなればないで別に構わない、そんな寒々とした気持ちが常に私の中にある。だからだろうか、人と交わるほどに面倒だけ増えると思うのは。

 

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